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はじめまして。
いつもメルマガを拝見し勉強させていだだいてます。
ありがとうございます。

私はキャリアカウンセラーとしてお仕事させていだだいてます。
担当するクライアントさんの今後の対応について悩んでいます。

こんな質問をしても大丈夫なのかわかりませんが、
川畑先生にご助言頂けるのであれば有難いと思い、メールしました。

個人情報もあるので、少ない情報になるかもしれません。すみません。

その方は、転職を繰り返しています。
カウンセラーに仕事を探してもらうのを当然と思っていて、
自分の思うようにカウンセラーが動かないと、クレームをつけてきます。

暇があればしょっちゅう電話をしてきます。
私にとって、今までにない大変なケースで正直お手上げといいたいです。

クライアントにのまれず、自分を保つ方法や、今後の対応について、
何かアドバイスがあれば教えて頂きたいです。

余談ですが、サイモントン療法には大変興味を持っています。
先日のオンライン講座は講読いたしました。
私もいつか川畑先生のようなカウンセラーになりたいと思っています。
ありがとうございました。

【カブトムシ・37歳・カウンセラー】

―――――――――――――――――

A:

FROM 川畑のぶこ

カウンセリングのカテゴリーにかかわらず、
カウンセラーを職業とされている方であれば、誰でも
カブトムシさんのようなケースに一度は遭遇することがあると思います。

クライエントさんと丁寧に真摯に向き合うカウンセラーの誠実な姿勢が、
図らずも相手がカウンセラーに過度に依存しやすい状態をつくりだしてしまう
ケースはよく耳にします。

おそらく、カブトムシさんも親身になって相手に寄り添う思いやり溢れる
カウンセラーでいらっしゃることと思います。

まず、このようなケースを防止するのに振り返っていただきたいのは、
初回面接の際に、カブトムシさんからクライエントさんに
カウンセリングの構造を明確に説明しているかということです。

カウンセリングが通常の悩み相談と違うのは、
ひとつには面接が構造化されていること、すなわち、会う時間は限定されており、
それ以外では基本的に、会ったり連絡をとったりしたりしないというものです。

組織であれば、受付で
「その話をするためには予約が必要である」ことを明確に伝えてもらいます。

ご自身で開業されている場合は、
時間外は電話に出ない(留守電で対応する)、
出たなら「改めて予約を取って欲しい」旨を明確に伝える必要があります。

これはカウンセリングがカウンセリングとして機能するために重要なポイントですので、
もし説明をされていないのなら改めて説明をする、
あるいは既に説明をしているのであれば「初回に説明したとおり…」と
再度入念に説明をされることをおすすめします。

バウンダリーと呼ばれる、カウンセラーとクライエントとの境界線がいったん崩れて
しまうと、カウンセリングは機能しなくなってしまいます。

さらに、カウンセラーの役割、カウンセリングでできることと出来ないこと(可能性と限界)
を明確に伝えることも大切です。

カウンセリングを受ける際、多くの人は医者が薬で病気を消してくれるように、
自分の問題をカウンセラーが解消してくれると期待しているようです。

恐らくカブトムシさんのクライエントさんはそのようなケースではないでしょうか。

ところが、カウンセリングは魔法の杖ではありません。
カウンセラーというのはクライエントの代わりに問題を解決するのではなく、
クライエント自身が問題解決できるよう寄り添い援助することが
メインの仕事となります。

アドラーが課題の分離という概念を提唱していますが、
クライエントにはクライエントの課題があり、それに向かい合い乗り越えることで
精神的成長や心理社会的成長が得られます。
カウンセラーがクライエントの宿題をしてしまう(就職先を探し決定する)ことは
クライエントの成長に繋がらないこと、それはカウンセラーの倫理として許されない
ことをきちんと説明してみてはいかがでしょうか。

また、相手が依存してしまうケースにおいて、
カウンセラー側の無意識な「結果やお手柄への執着」の問題もあります。

クライエントの結果をカウンセラー自身が「私が」出さねばという力動で関わり合うと、
知らぬ間に相手は「この人が面倒みてくれる」と思ってしまい、
それが当然のように振る舞うことがあります。

やる気満々のカウンセラーであればあるほど、
結果が出ないことに罪悪感を覚えることを見越し、
その罪悪感を刺激することで自分の得たいものを手に入れようと関わる
クライエントもいることでしょう(これも無意識のプロセスです)。

そのようなダイナミズムを見越して関わり合うことは大切です。

もし、カウンセラー側がこのような状況にいると、悪循環に陥ってしまいますので、
お手柄の執着を捨てる勇気が必要となります。

それは他人から承認されることで自分を満たそうとすることをやめる勇気です。

そのためには、カブトムシさんご自身が、
「たとえ万人に承認されなくとも、私は私なりにその時点でのベストを尽くしている。
いい人間だ。」と自己承認できていることが大切です。

そして、「これ以上は自分の手にはおえない」と思われるクライエントに対しては、
毅然とした姿勢で前述のような説明をされたうえで、ほかのカウンセラーへ紹介
(リファー)するなどの対策を講じてみるのも良いのではないでしょうか。
「私には限界ですので、大変申し訳ありませんが」という流れです。

これはないかとは思いますが、万一大風呂敷を敷いてしまっていて
「大丈夫必ず私があなたの就職先を見つけます!」と口約束をしてしまっている
のであれば、それは撤回しないといけません。

大切なのは、カウンセラーが出したい結果を出すことではなく、
クライエントが踏むべき必要なプロセスを踏むことかと思います。

クライエントは紹介先でも同じパターンを繰り返すかもしれませんが、
それもその人にとって必要なプロセスと信じることが大切となってくると思います。

最後に、時として、カブトムシさんのクライエントさんのようなケースでは、
キャリアカウンセリングの域を超える問題(たとえばパーソナリティー障害などの
精神疾患)も考えられ、場合によっては精神科の受診が好ましいことなどもあります。

そうであればなおさら、カウンセラーサイドの抱え込みは
互いに不幸を招くだけとなります。

臨床では頭痛を心身症と判断してカウンセラーが熱心にカウンセリングを
継続したところ、実は脳腫瘍で早くに治療が必要であったケースなども存在します。

ぜひ、全体として「何が機能的か」ということに焦点をあてて行動されてみてください。

カウンセラーの仕事は辛いこともありますが、やりがいもあると思いますので、
失敗も学びに変えて、ぜひこれからもがんばってご活躍されてください!

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