Q.もうすぐ28歳になる、
別居の長女のことでご相談します。
我が家は皆、発達障害、娘も
アスペルガーでまちがいないです
(2つ上の兄が診断を受けました)。
子供の頃から友達を作らず、
人が嫌いで被害者意識が強く、
話を勝手に作り上げて恨みます。
あることで、娘を怒らせてしまい、
私は20回ほどはあやまりました。
けれど気がおさまらない様子で、
音信不通だった間に私のことで
弁護士さんに相談もしたようです。
その娘が年末、帰宅し、
私は普通に接しましたが、
娘は、私への恨みが忘れられない
とまた言い出しました。
そして、突然、無言のまま私の頬を
思い切り殴りつけてきました。
驚いた私に
「ママを殴りたくて何度夢にみたことか」
と言います。
自分の見解と私の見解が違うことが
許せないらしく娘も泣いていました。
しばらくして、
やれやれと私が洗い物をしていると、
「この次来たときには忘れているよ」
と言いながら大股に近寄ってきて、
なんと今度は私の延髄を
おもいきり殴りました。
下をむいていて娘のことは気にせず
いたときのことでした。今度ばかりは
私も大声で彼女をいさめました。
何をいったか覚えていませんが、
頬を打つつもりが失敗しました。
「縁を切る」と宣言したようにも思います。
私は娘にこれまで
手をあげたことはありません。
愚痴にも寄り添い、助言はしても
面と向かって攻めることは
しなかったつもりです。
爆弾を抱えているような娘に
とても気を遣って接してきました。
ですが、娘はモノにあたる傾向があり、
これまでも湯船に拳でひびを入れたり、
壁に穴を開けたりしています。
一時は精神科に通い、
薬も飲んで穏やかになりましたが、
通うのをおっくうがり、やめてしまいました。
油断しているところへ、いきなりの暴力で、
もう娘を出入り禁止にすると決めました。
娘も我が家にはもう来ないでしょう。
私も頭にきて、娘の食器とパジャマを
即刻処分しました。
今後も、このままでいいでしょうか。
【ハイデル・60代・女性・主婦】
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A:FROM 川畑のぶこ
ニューロ・ダイバーシティー
(神経・脳の多様性)という概念が
提唱されて久しいですが、
アスペルガー(自閉症スペクトラム)のような
神経学的に非定型的な発達を持つ人や
家族に対してどのように接したらよいか
という啓発はまだまだ
社会に浸透していないように感じます。
ニューロ・ダイバーシティというのは、
私たちの脳はひとりひとり違いがあって、
優劣なく、みな個性とみなし、
自閉症やADHDなどはヒトゲノムの差異の
結果として現れるもので、
それぞれ強みを持っている、
とする考え方です。
アスペルガー症候群は、
社会性やコミュニケーションの障害、
想像力や共感性の欠如、
思い込みやこだわりの強さ、
感覚の過敏などの特徴がある
自閉症スペクトラム障がいのなかで、
言語や知能の発達の遅れはないもの
をいいますが、
私たちはみんな、
多少なりとも自閉的な部分を持っているので、
程度の差の問題ということから
「スペクトラム」障がい
とされるようになりました。
家族や社会が発達障がいについて理解を深め、
多様性を受け入れていくことは大切ですが、
ハイデルさんのように、
暴力を受けている場合、受容し難いですね。
後頭部を不意に殴られるというのは
命の危険を意味しますから、
今回ハイデルさんが咄嗟に「縁を切る」と
宣言したのもやむを得ないと思います。
家族も安全安心に幸せを追求して
生きる権利がありますから。
暴力は許されるものではなく、
許されるとするならば、
命が危険にさらされるなど
自己防衛のケースのみでしょう。
アスペルガーの家族が長年努力して
寄り添おうとするも、努力も虚しく
疲弊して心身に支障が出てくる状態を
カッサンドラ症候群と呼びます。
このようなケースでは本人とともに
家族のケアも必要です。
ハイデルさんも娘さんのことは
気がかりでしょうが、常に保護者が
必要な状態ではありませんから、
ここはひとまずご自身のケアに集中して
充電することをおすすめします。
また、家族会への参加はお勧めです。
同じ問題を抱える者同士で語らうだけでも、
心が落ち着き、前向きになれることもあります。
また、そのような場では、
ほかの当事者や家族から有用な情報や
知恵が得られることもあります。
また、ハイデルさんの語ることが
他の人の役に立つこともあります。
身内の問題を外に出すのは恥と考えずに、
みんなが抱え得る問題として
受け止めてみてください。
以前、娘さんが受診していた頃は
調子が良かったということ。
当面娘さんとコミュニケーションすることは
無いかもしれませんが、そのチャンスが訪れ、
母親の声に耳を傾ける姿勢を見せたなら、
ぜひ受診を促してください。
娘さんはソーシャルスキルトレーニング
(SST)は受けているでしょうか?
精神科でも、デイケアを併設しているところ
では、社会で適切に人と関わり合いながら
生活していくための訓練(ソーシャル
スキルトレーニング)を実施しています。
おそらく娘さんは母親以外とも、
同じような心理社会的問題を抱えている
でしょうから、専門家や当事者とともに
ソーシャルスキルを獲得することで、
より生きやすい人生を送れる可能性があります。
そのような情報も
ぜひ娘さんと共有してみてください。
今は少し熱が冷めるまで
クールダウンの時間と割り切り、
ご自身のケアに勤しみ、
娘さんが自分の人生に必要な課題に向き合い、
乗り越えられるよう、
愛のエネルギーを送ってください。
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