2025年あけましておめでとうございます。
みなさんは
新しい年をどのようにお迎えでしょうか。
私は11月に引っ越した新居で
家族とともに和やかに新年を迎えました。
新築のキッチンで、
おろしたての包丁と新品のまな板で
おせち料理をつくると、
実に清々しい気持ちになり、
いつになく希望に満ちた新年を迎えました。
3階の息子の部屋からは
青空の向こうに富士山を拝めます。
元日には大國魂神社に初詣に行き、
世界の平和と、私と私の大切な人の、
またそうでない人の健康と幸せを、
それぞれがきちんと
それぞれの課題に向き合い、
豊かに人生を送れることを
祈願してきました。
参拝のあとに屋台で買った
すもも飴もこころ浮き立つものでした。
それ以外は、
自宅でおせちを頬張りながら
めったにつけないテレビで新春番組を見たり、
ブランケットにくるまって、
甘酒をすすりながら見たかった映画を
貪るように見たりと、
のんびり満たされるお正月となっています。
今年は巳年ですが、
ヘビは脱皮する特徴からも、変化や変容、
また再生や復活などのシンボルだそうで、
とても縁起のよい干支です。
ただ、私たちは変化を望みつつも、
それらを恐れ避けてしまう傾向もあります。
変化をおこした結果、
望まない結果になったらどうしようと
不安になってしまうものです。
ネガティブな状態を徹底的に排除して、
ポジティブな状態に
人生をコントロールしたいのが私達です。
でも残念ながら変化やチャレンジには
かならずリスクが伴いますし、
そもそもチャレンジしなくとも人生には
ネガティブなこともポジティブなことも
起こるものです。
以前、知人で禅僧の藤田一照さんが、
私たちの抱く苦悩は、
痛みに抵抗がかけ合わさることで生じると
教えてくれました。
人生に痛みは避けられませんが、
痛みに抵抗しようとすると苦しみとなり、
抵抗しなければ、
それはただの痛みとして存在するだけで
苦しみにはならないということです。
これは目からウロコでした。
ネガティブなこと(人生の痛み)に抗わず、
それらをしなやかに受け入れることは
人生の大いなる智慧ということです。
イギリスの偉大な詩人、ジョン・キーツは、
「ネガティブ・ケイパビリティ」
と彼が呼ぶ、
ネガティブな状況に耐えうるちからの
重要性を説きました。
このネガティブ・ケイパビリティは
私が今年大切にしたいテーマとなっています。
私たちはなんでもすぐに知りたいですし、
結果を得たいですし、
モヤモヤがだいきらいです。
ところが、
ネガティヴ・ケイパビリティとは、
不確実性、謎、疑念の中にあっても、
すぐに事実や理由を求めることなく、
穏やかに生きるちからのことをいいます。
論理や合理性、また科学を重んじる世界では
なじまないかもしれませんが、
芸術や文学の世界では、
作品に解釈の余地を与え、
ものごとを深く掘り下げるのに
とても大切な概念となります。
キーツはそのような能力が人生をしなやかに、
そして穏やかに生きる智慧となると
説いています。
キーツ自身はもともと
外科医としてのトレーニングを受けますが、
幼少期より言葉に対する感受性が高く
シェイクスピアに大きな影響を受けて
詩人となります。
彼の人生は波乱に満ちたもので、
父親の死、弟の死、母親の再婚と離婚
そして死を若くして体験します。
また、詩人として評価を得ても生活は苦しく、
自らも結核を患い、恋人との結婚を諦めます。
キーツは25歳という若さで生涯を閉じるのですが、
その間発表した数々の優れた詩の中には、
キーツのネガティブ・ケイパビリティを
表現する素晴らしいものがあります。
その代表的なものを、
この新たな年のはじまりに、
みなさんに贈りたいと思います。
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喜びも、悲しみも歓迎する
忘却の川の藻も、ヘルメスの羽も同じだ
今日も来い、明日も来い
二つとも、私は愛する
悲しい顔を、晴れた空に向け
雷の中に、楽しい笑い声を聞くのも
私は好きだ
晴天も悪天候も、どちらも好きだ
甘美な牧草地の下で、炎が燃えている
不思議なものへの、くすくす笑い
パントマイムの思慮深い顔
葬式と、尖塔の鐘
幼児が頭蓋骨で遊んでいる
晴れた朝の、嵐で難破した船体
すいかずらの巻きつく毒草
赤いバラの中で、蛇が舌を鳴らす
優雅な服をまとったクレオパトラが
胸に肉汁のゼリーをつけている
踊る音楽、悲しい音楽
二つとも正気で狂っている
輝く詩の女神と蒼ざめた女神
暗い農耕の神と、健全な滑稽の神
笑って、溜息をつき、また笑え
ああ、何という痛みの甘美さよ
詩の女神が輝き、蒼ざめる
そのヴェールをとって顔を見せてくれ
私に見せ、書かせておくれ
その日と夜を
二つともで私を満たしてくれ
甘美な心の痛みに対する私の大いなる喝き
私の東屋をお前のものにして
新しい銀梅花や松、
花満開のライムの樹で包んでおくれ
そして低い芝草の墓が私の寝椅子だ
[参考書籍:帚木 蓬生著
『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』
(朝日新聞出版)]
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2025年がみなさんに
たくさんの笑顔をもたらす年と
なりますように。
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1 件のコメント
ご無沙汰しております。覚えておられますでしょうか。サイモントン療法は私の生きる柱となっています。
今年のテーマはネガティブ・ケイパビリティは今の私にとても響きました。ありがとうございます。私も今年のテーマとして1年穏やかな日々を送りたいと思います。
昨年末から娘との関係が悪くなったり、自宅を手放さなければいけない状況になったりと、自分にとって心が痛むことが続いていました。昨年末には、事実として受け止め、抵抗しないでおこうと思い、苦しみからは解放されてはいましたが、なんだか気分は晴れていませんでした。今日ののぶこさんのメッセージは本当によいタイミングで私に届きました。
本当にありがとうございました。