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Q:大学生の一人娘についてです。
娘は実家で暮らし、
大学もバイトもサークル活動も
特に問題なくこなしています。

問題は彼女の部屋が異常に汚いのです。

本人は服装や美容にこだわり、
きれいに装って出掛けていますが、
居住空間は外見からは想像できないほど
荒れています。

モノが床に溢れるだけではなく、
食べ残しが腐っていようが、
汚れた衣類やゴミが散乱していようが、
まったく掃除しようとせず、
異様な匂いがしていても平気なようです。

私は掃除片づけが好きで、潔癖症なので、
このような娘の性分が理解できません。

それに、
汚さが度を越して病的な感じもします。

何度も注意したり、時には強く叱ったり、
「健康や美容にとっても
 不潔な空間はよくない」
と伝えているのですが、
一向に改善しません。

娘の部屋から漏れてくる悪臭に
気分が悪くなり、
彼女の不在時に部屋に入って
汚物を片づけることもしばしばです。

本人は部屋に入られるのは嫌なようで、
最初は不機嫌になっていましたが、
そのうち慣れたのか知らん顔をしています。

普段は母娘の関係は良く、
お互いに話を聴き合って
二人仲良く暮らしています(父親は単身赴任)。

しかし部屋のことになると、
私の言うことに拒否反応を示して
不機嫌になったり
数日間も無視したりすることもあるので、
まともに話ができない状態です。

今は
「時間がある時には部屋を掃除してね」
ぐらいしか言えず、
「うん」
と生返事が返ってくるような感じです。

一度彼氏が遊びに来た時には、
必死に見苦しくない状態まで
片づけていました(すぐに元に戻りましたが)。

私が潔癖である反動なのか、
部活や勉強で忙しかったため、
(私がやってしまい)掃除や片づけを
あまりしてこなかったせいなのか…

本人が清潔な空間で暮らすことに
意識を向け、
自室を整えられるようにするには、
どのようにしたら良いでしょうか。

【ココヨ・50代・女性・児童施設長】
 
―――――――――――――――――
     
     
A:FROM 川畑のぶこ
        
大学生の娘さんの部屋が
異常に汚く病的とのことで、
親心としては心配極まりない状態ですね。

ココヨさんは潔癖症とのことですから、
なおさらその状態を目にするのは
日々ストレスが蓄積されることと思います。

ココヨさんのご相談を読んでいて
気になったのは、娘さんは片づけ以外に、

学校生活で忘れ物が多いとか、
授業で集中力が続かず
成績が振るわないとか、
眼の前の刺激や楽しいものに
心が奪われてしまい、
本来の目的や重要なことを
後回しにしてしまう、

というようなことはないでしょうか?

もしそのような傾向がある場合、
発達障害のひとつである
ADHDの可能性があるかもしれません。

ADHD(注意欠如・多動症)の場合、
脳機能の障害があって、
本人の意志の力では
どうにもならないことがあります。

私たちの脳には遂行機能と呼ばれる、
目標や計画を立てたり判断したりするなど
思考や行動を制御する際に使われる
認知制御機能があるのですが、
ADHDの人はその遂行機能に
障害があります。

そのため、段取りや取捨選択を必要とする
片づけがうまくいかず、
部屋が散らかってしまうことが
多いのですが、
 
これは、本来やればできる人が
怠けているから起きていることではなく、
本人もどうしたらよいかわからず
困っているか、やってもうまくできないので
諦めている状態が多いです。

そこを叱られたり批判されたりするので、
モチベーションも低くなってしまい
悪循環に陥ってしまうのですね。

もし、
片づけられない理由がADHDである場合、
娘さんに必要なのは叱責や批判ではなく
サポートです。

生まれつきの脳機能の場合、
薬で治せるものではありませんから、
いかにその障害とうまく付き合って、
対処していくかが課題となります。

片づけも工夫が必要で、
集中力の持つ範囲内で行い、
取り組む場所や取り組み方もルールを決めて、
 
ビフォー&アフターの変化が
わかりやすく目に見えるかたちで
モチベーションを維持しながら
取り組むことが大切になります。

取捨選択ができないのであれば、
要・不要の基準を明確に、たとえば
1年以上使わなかったものは捨てる
などとルールを決めて仕分けしていきます。

仕分けの際は、
捨てるものの箱には「捨」、
取っておくものの箱には「取」、
迷うものは「迷」などと
目に見えるように3種にラベリングして
取り組むことをおすすめします。

確実に誰かにあげたいことが
明確なものに関しては、4つめの
「贈」の箱を準備しても良いでしょう。

また、
取り組む時間や範囲も決めてから行います。
今日は20分だけなど、
確実に集中力がもつ時間に設定し、
スマホのアラーム機能なども
活用するのが良いでしょう。

取り組む場所は、
命や健康に関係することは
何より優先させる必要がありますから、
異臭を放つ腐った食べ物などは、
まずそれだけに集中して
最初に捨ててください。

そのあとは、この1畳だけとか
このコーナーだけなどと限定し、
決めたら決してそこから動かず、
その場所だけに集中するという具合です。

部屋全体を一気に整理すると考えると、
気が遠くなりどこからどう手をつけてよいか
わからなくなるので、
場所と時間を限定することが大事です。

このように、
可能なことを少しずつ取り組むという
スモールステップ方式を
心がけてみてください。

手をつける順序も、ADHDの人は
視覚刺激に影響を受けやすいため、
取り組む場所はパッと見えるところから
取り組むことで
モチベーションを維持させます。

たとえば、
いきなりクローゼットの中や
引き出しの中などに手を出すと、
それらの中身を一旦床やテーブルに
出すことになるので、パッと見、
部屋がさらに散らかったような状態に
見えてしまいます。

するとやる気が失せてしまいますので、
目に見えるテーブルの上や机の上、
椅子や床やベッドなど
水平面から取り組むことは大事です。

それら水平面のものは、
本来収納場所ではなく、作業をするとか
座るとか寝るとかといった活動を
支える機能を持っているはずですから、
早めにそれら本来の機能を取り戻すことで
モチベーションも維持できます。

開始する前後に写真を撮って
見比べるのも効果的です。

片づけを始める前に、取り組む場所の
チェックリストを作っておき、
遂行できたらチェックしていくのも
良いでしょう。

また、
目の前の刺激に左右される特性を理解して、
写真や本や漫画などをついつい手にとって
見はじめたり読みはじめたりしないよう、
心に誓ってから取り組むことも大事です。

服も一緒で、
娘さんの場合は美容やファッションに
興味があるようですから、
片づけの最中にファッションショーや
メイクが始まらないよう
誓って開始するのが良いです。

全身鏡は最初に覆ってしまい、
「鏡禁止!」
と張り紙などしておいても良いでしょう。

その日に決めた時間と場所をクリアできたら
自分にご褒美を与えるのも良いです。

たとえば、さきほど我慢した
写真や本や漫画を読む時間をとる
などもご褒美のひとつになります。

これらのステップは
もちろんADHDでなくても
片づけが苦手な人にも有効ですので、
ぜひ参考にしてみてください。

もし、娘さんが何の障害もなく
ただ怠けているだけなら、
失敗から学ぶことを見守る修行と
切り替えてください。

娘さんは彼氏が来るときは
頑張って片づけるようですから、
部屋が汚れていることで
大切な異性との人間関係が崩れる
体験をもって初めて問題意識が芽生え、
片づけの重要性を
学ぶことになるかもしれません。

人間は成功より失敗から
多くを学ぶと言われています。

娘さんの学びのタイミングも
信頼してあげてください。

                  
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